24.敵か味方か#4

 大丈夫だ。ガランはわかってくれている。ちゃんとわかっているよと、俺に言っているんだ。
「暗くなんかありません。今からソディックさんの所へ行って、すぐに準備を始めます」
 ガランは「そうかい。私が飲みたかったのに、残念だ」と笑った後、こう言った。
「森に入ったら、自分の身の安全と、やるべきことだけを考えなさい。村のことは何も心配しなくてよい。それは私の仕事だ」
 ソディックの所へ向かいながら、おそらくガランは噂を知っている、と思った。彼の味方だっているはずだ。ハヴェオの思い通りにばかりいくもんか。
 一方で、完全にこの状況から取り残されている人物を見つけた。勿論ソディックだ。いつもと変わらない愛想の無い態度でポールとメモ紙を「これ。座標はこれ」と突き出し、はい帰ってというカンジで黙っているので、思わず尋ねてしまった。
「ガランの噂? 知らない。最近、人に会っていない」
 彼はあっさり言った。こんな狭い村でどうやって人に会わずに済ませているのか、不思議だ。配給はどうしているのかと聞いたら、届けてもらっているという。この前の新月祭にも出なかったらしい。取り残されるはずだ。
 妙な感じがした。彼はシールド・ポールという、ある意味、この村で一番重要なモノを握っている。ハヴェオにしてみれば、とても大切な人間、どうやってでも味方に付けたい人間のはずだ。しかしハヴェオはソディックを毛嫌いしている……。
 黙っていると、ソディックが出し抜けに「妙な顔をしている」と言った。あいかわらず本当のことをそのまま言う男だ。ウィルはそのままを尋ねてみた。ハヴェオとあなたは仲が良くないように見える、それは何故なのか、と。
「私は誰とも仲が良くない」
 平然と言われると、ちょっと、いやかなりショックだ。それって、俺も対象外ってことか。
 ソディックは続けた。
「彼もまた、誰とでも仲良くする人間ではない。私と彼の仲が良くないのは当たり前。何かおかしいか」
「おかしいというか、つじつまが合わないというか。つまり、えーと――シールド・ポールのことです。彼はポールが重要な物だと知っているのに、どうしてそれを作るソディックさんを、その、大切にしないのかな、と」
 言ってから気が付いた。ソディックの服は古いままだった。
 ソディックは「大切にしない?」と呟いた後、しばらく考え、こうまとめた。
「必要なはずの人間をなぜ冷遇するのか、という意味か。答えは簡単。彼がシールド・ポールの必要性を知ったのはごく最近。君が成人した後、私がポールを完成させた後だ。それまではガランと私だけの秘密だった。彼にとって私は、十数年間、完璧に役立たずの人間だった。その認識を数ヶ月で覆すことは難しい」