25.新しき人々#11

 男達の輪が崩れた。
 こちらを向いたままじりじりと後ずさってゆく。誰だあれは? 竜使いだ、カピタルの――と彼らが囁きあう口元が見える。一人が大鉈を構えた。ウィルは我知らず銃の筒先を彼の胸元へ向けた。腕に、エヴィーの腹を挟む脚に力が入る。エヴィーの足並みが速くなる。彼らとの距離がどんどん縮まりもうあと少しで接触というとき、野太い大声が林に響いた。
「お前ら、何してる! 下がれ、離れろ!」
 男達の後方からだった。ルロウの方角から、地響きを立てて何かが駆けて来る。はっと視線を上げたウィルはぎょっとした。
 パルヴィスだ。エヴィーよりずっと大きく猛々しい、そうまるでロックダムだ。騎乗している大男を見てさらにぎょっとした。ルロウとの会談の席にいた奴だ。グレズリーよりブラウそっくりの巨漢の男。竜使いだったのか!
 ルロウの男達の態度が一変した。味方の登場に勢いづく。大鉈を構えた男が、あとずさるのをやめた。若い男達がこちらに踏み出す。ウィルは直感した。巨漢の竜使いが合流したら最後だ。狙うならあいつ――撃て!
 凄まじい金属音。一直線にルロウの竜使いを襲い走る。続いて竜の咆哮、竜が後足で立ち上がる、その耳元へ撃ち込んだ二弾目が効いた。ルロウのパルヴィスはもの凄い悲鳴を上げのけぞり倒れた。
「うわーっ!」
 竜使いが放り出された。地面にしたたかに打ちつけられ、ごろごろ転がった。
 枯れ草にまみれ、悪態をつきながらやっとこさ起き上がった彼は、完全に腹を上にし宙で脚をかくパルヴィスのそばで、情けない声をあげた。
「おぉーい、大丈夫かよ……参ったねこりゃ……おい、お前ら、手伝ってくれ!」
 撃音に耳を塞いでいた男達は、頼みの竜使いの体たらくを見てすっかり腰が引けていた。ウィルのほうを振り返り振り返り、慌てて竜使いの元に駆け寄る。仲間達と合流した竜使いは、油断なく銃を構え続けるウィルを睨み指差し、遠くから怒鳴ってきた。
「おいこら、お前! お前も竜使いだったら、やっていいことと悪いことくらいわきまえろ、阿呆! 情けの無い奴だな、それがカピタルの流儀か!?」
 彼の言葉は聞こえた、だがその意味がウィルには伝わらなかった。何言ってるんだ、あいつ? 情けの無い奴らはどっちだ? 竜使いだったらなんだっていうんだ?