26.ポールの行方#3

 四人で充分堪能した後、球体のスイッチをひねって光を消し、再びランプを燈したときには、魔法が終わったのかという気がした。輝く森の世界から、一瞬で元の薄暗い部屋へ。前よりずっと暗く陰気に感じた。ガランが「ハヴェオ、もっと灯りを強くしなさい」と言ったくらいだから、そう感じたのは自分だけではないらしい。
「これで精一杯ですが」
 ランプの火力を最大にしてぼやくハヴェオの隣で、アリータが笑い出した。
「村じゅうのランプを集めても、これには敵(かな)いませんね。首都の科学って、本当に凄い。それを独りで使いこなすソディックさんは、もっと凄いけれど」
 ガランがうなずき、指示を出した。
「まさしく。ウィリアム、夜遅くにすまないが、これをソディックの所へ返しに行き伝言してくれないか。出来は充分だが、やはりちと光が強すぎる、持ち主の目がやられないように加工して欲しいと。出来あがったら、私ではなく君に直接届けてもらいなさい。それを受け取ったら次のポールを埋める準備だ。もうすぐ三本のポールが完成するはずだ。我々の計画は順調だよ、ウィリアム。何も心配することは無い」

 ガランの伝言を「了解」と一言で受けたソディックが、「出来た」とウィルのテントを訪ねてきたのは翌日の夕方だった。
「早いですね!」
 思わず言ったウィルに、彼は厳しい顔で答えた。
「こんなこと一つに何日も使う気はない」
 ヒヤリとする言い方だ。もういくらも時間が無い――そう聞こえた。
 ハルも同じように感じたのだろう。遠慮がちに、ポールの製作は順調ですか、と尋ねた。
「順調といえば順調。不調といえば不調。製作には慣れた。が……」
「が?」
 首を傾けたウィルに、ソディックは軽く溜息を付いた。妙な雰囲気だ。ややあって、ぼそりと言った。
「……製作に必要なある資源が、足りない。無い」
「えっ!じゃあ……ポールが揃わないってことですか」
「別の物で代用することを考えたのだが、解が見つからない。見つけることは不可能な気がする」
「ガランへの報告は?」
「まだだ。これから報告に行く」
「そんな! それじゃあ虚粒子シールドは、メルトダウンは――」
 後が続かなかった。何かの言葉が頭をよぎったが、最悪すぎて、忌まわしすぎて、捕まえられなかった。こわばる二人を前にして、彼は軽く首を振った。
「まだ望みはある。一つ、『休憩所』の資源を利用すること。もう一つ、ルロウの資源を利用すること。だが今の時点ではどちらも困難。取りに行こうにも一方は距離の壁、もう一方は人の壁で塞がっている。どうしたものか。いい案は無いか?」