03.成人の報告 #8

「竜には、乗りましたが」
 ウィルが口を軽くとがらせると、まあまあと手を揺らした。
「乗れただけで、騎乗とは言えんな。まあ、笛が使えるようになったら一人前だよ。レオン・セルゲイに会ってこい。実際の竜使いに聞くのが一番だ」
「レオン・セルゲイ!」
 ハルが呟いた。
 さっきから、ウィルそっちのけで眼を輝かせて聞いていた。彼にとって、本物の竜使いじきじきに騎乗を教わることは、最高にうらやましいことだった。
 だがウィルは、新たな不安を感じていた。
 セルゲイは、村のはずれで今でもテントを張って暮らしている老人だ。もう六十近い歳で、十年以上前から両足の自由が利かなかいらしい。
 この森を見つけた時に竜使いと呼ばれていたのは、レオン・セルゲイと父のサムソン・リロードだけだったが、セルゲイはすでに竜から降りていたので、現役はサム一人だった。気難しい性格で、子供に愛想をするような男ではなかったし、そもそも自分のテントから滅多に出てこなかったので、みんな憧れの竜使いと知ってはいたが敬遠していた。ウィルはサムから森を探して放浪していたころの冒険談を聞いていて、セルゲイもたびたび話に登場した。しかしとっくに引退した老人を見るかぎり、その活躍ぶりはちょっと信じられなかった。
「セルゲイさんには、どう言えばいいでしょう」
 ウィルは思わずガランに聞いた。
「うん? 心配するな。私から伝えておくよ」
 少しほっとした。
 そこへ、ハヴェオが湯気をたてたカップを三つ持って入ってきた。