表現、対等、個人、テラ・インコグニタ

海風氏との対話記事#2です。初見のかたはまず議論ルールをご確認ください。
Yahoo!BLOGSからの返信が予想されるので、呼称をはてなid:umikajiから海風氏に切り替えます。




ネット上で他者とどのように向き合うか、関わり合うか。このテーマをめぐり、海風氏と私との間に見解の相違がある、それはある局面において全面衝突しかねない差異であろう、と私は感じている。
どのような局面でどのように衝突するかは脇に置いて、まずは、ネット上での私自身のスタンスを記述する。

 * * *

一点目。

私はネット上に現れている「他者の精神」を、リアルにおける彼の精神と切り離して見ている。
ネット上の他者を、いわば「創作された人格」として空疎に見ている、という意味ではない。ネットに表出している人格がリアルの彼の人格に近かろうが遠かろうが別物だろうが、私はほとんど興味が無い。
彼が書いていること・書いてきたことに宿っている「人という存在」に触れられれば私はそれで良い。書かれたものが彼のリアルに近いならば、私は彼のリアルの精神に触れているのだし、書かれたものが創作に近いならば、私は彼の創作の精神に触れている。どちらでも充分だ。

私は、彼が表現したものを受け取ることに集中する。表現されたものを味わう。楽しむ。これはと思う人とは言葉を交わしたいとも思う。ただし私が興味惹かれる表現は、常に、彼自身の精神の内を語ってくれるものに偏っている。
自分の内の深いところを開け放して見せてくれる文章が好きだ。その人が格別変わった個性や属性を持っている必要はない。深く掘り下げてゆけば、どのような人もユニークな存在だと私は感じる。また、それほど深く内観できない人であっても、ユニークな経験や背景を持っている人の率直な文章は面白い。貴重でもある。テラ・インコグニタ。

私にとってのテラ・インコグニタは、おそらく誰の内にもあるが、人が表現し始めてすぐ表出するものではないだろう。だから私は、未来の可能性に掛けて、全ての人の表現が卑下されることなく、対等に、潰されずに、存続してゆけたら良いと願う。

彼が書いていることに何らかの危うさがあったとする。あるいは誰かに危害を加え得るものであったとする。その危険がネット上での誰か(彼自身も含めて)の表現活動に及ぶものであるとき、私はネット世界に置いた自分の人格を傾けて、その危険を取り除こうとあるいは危険性を下げようと「踏み出す」「踏み込む」ことがある。
ただし私は、人の排除を以ってその危険を予防するという選択だけは取りたくない。どうしてもそうせざるを得ないとしても、極限まで迷うだろうと思う。

その危険性が彼自身のリアルに及ぶものであるとき、(私と彼との間にそれなりの親近感か信頼関係があるならば)私はごく簡単な言葉を掛けるだけに留めて、それ以上は踏み出さない。私は個人の『生』に干渉することを好まないし、干渉されることは尚のこと好まない。

 * * *

二点目。

私は世間並みの幸福というものに高い価値を置いていない。
何を「世間並みの幸福」と呼ぶかは人によるだろうが。心身ともに健康であること、家庭が平和であること、安定した職があること、将来の不安が無いこと、などが挙げられるか。確かにそれらは、あるに越したことはない。というより、それらを持つことが叶わないとき人は幸福を感じることが難しくなる、安定した自己肯定感を得ることも難しくなると考えるから、無論あって悪いものでは(大抵)ない。しかし私はやはり、それらにあまり高い価値を置いていない。

私は、人が自分の生を全うするということに高い価値を置く。彼が彼であるということを自覚し、彼が自分の生の舵を取ろうとすること、その精神に最も高い価値を置く。
何をしたか、何を得たか、何を生んだかは、彼自身が評価すればよい。彼が自分を低く評価するならば、そういうものの考えかたじたいが彼のひとつの選択だから、私はそれを尊重する。勝手にすればいい、ということではなく、そういう部分も含めて「個人」なのだと思う。ポジティブに生きればいいのになどとは思わず、もっと上手く生きればいいのにとは思わず、こうすればもっと幸福になれるのにとも思わない。

ただ、自分がこうと決めた方向へ生きて往くとき、あるいは何も決められなままにともかく生きて往くとき、その道が彼にとってなにかしら心を楽しませるもの、少しでも豊かなものであったらよいな、と思う。私は言霊を信じなくなったが、あなたの往く道に幸あれ、という言祝(ことほ)ぎだけは、今でも他者に掛けたくなるときがある。




まずは、私のスタンスの核の部分を表した。海風氏ならば、どのあたりの記述が互いの「衝突点」に掛かってくるか判別できるかと思う。・・・のだが、サッパリわからないということであれば、この記事は寝言です。気にしないで(・∀・)

議論するにあたって必要な前質問などあれば、自由にコメントを使ってください。この記事に異論をぶつけていただいてもいいし、いったんこの件は了解としそちらの記事で議題(3)に移っていただいても構わない。どのようにでも、どうとでも(笑)