日教組全体集会拒否事件-日本教職員組合側の抗議文(転載)

当事者である 株式会社プリンスホテル および 日本教職員組合 の本件に対する声明文を転載します。
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日本教職員組合のホームページに掲載されている抗議声明文は以下の通り。発信主体は「日本教職員組合中央執行委員会」

ホテル側の司法判断無視に抗議 第58次教育研究全国集会全体集会中止の抗議声明(発信日:2/1)
緊急抗議声明

日教組は、第57次教育研究全国集会を東京で開催することを確定し、07年3月、グランドプリンスホテル新高輪に会場使用を申し込み、利用承諾の回答を得て、契約が成立した。その後、両者で実務的な打合せをすすめてきたにもかかわらず、11月になって突然、右翼の街宣行動を理由にして、株式会社プリンスホテルが一方的に契約解除を通告してきた。

プリンスホテルに契約解除撤回を求めてきたが、聞き入れられず、やむを得ず東京地裁に「仮処分申立」を行った。1月30日、東京高裁は、日教組の会場使用を認め、プリンスホテルの抗告を棄却した。07年12月26日、08年1月16日に出された東京地裁の「日教組に会場使用させなければならない」との裁定に加え、三度にわたる司法の判断である。

日教組は、これらの司法判断を踏まえ、開催日ぎりぎりの段階まで、全体集会をグランドプリンスホテル新高輪にて開催するべく何度もプリンスホテルに申し入れてきた。しかし、プリンスホテルの会場使用拒否の姿勢は変わらず、また、本日の話し合いの場で、私たちが予約していた会場を同日、他の団体に貸していることが判明した。実に信じがたい暴挙である。

こうした経過の中で、準備の時間を考え、日教組中央執行委員会として、ついに「全体集会」中止の決断をせざるを得なくなった。

日教組は、結成当時から教育の民主化と研究の自由を柱とする教育研究活動を重視し、1951年に第1次全国教研を栃木県の日光において開催し、昨年の第56次まで毎年継続して全国各地で開催してきた。
全体集会では、今日的な教育課題を共有化するとともに、教育研究の目標を明らかにし、「開かれた教研」をめざしてきた。全体集会の内容を受けた分科会では、一人ひとりの教育実践に学びあい、交流をはかってきた。これらの教研集会は、教育研究の機会として社会的にも幅広く認知され、国内外から高い評価を受けている。

プリンスホテルの裁判所の決定を無視した今回の態度は、司法制度の根幹を揺るがす暴挙であり、法治国家においてあるまじきことである。また、集会・結社・表現の自由を保障した日本国憲法21条にも抵触し、教育研究活動の自由を妨げるものである。法令順守が各企業・団体に厳しく求められている今、プリンスホテル不法行為は断じて容認できるものでない。断固抗議する。

同ホームページからリンクされている、日本労働組合総連合会事務局長 古賀伸明氏の談話
日教組ではなく日本労働組合総連合会であることに注意。当事者ではないが、ホテル側の契約解除を「正当な労働組合活動を妨害するもの」と批判するなど、本件における社会的な問題点を端的に示しているため、全文転載します。

日教組・第57次教育研究全国集会(全体集会)中止の決定についての談話(発信日:2/1)
 日本教職員組合(以降、日教組)は、本日、2月2日から4日にかけて開催を予定していた第57次教育研究全国集会(以下、教研集会)の全体集会の中止を決定した。これは、会場使用契約を締結していたグランドプリンスホテル新高輪(株式会社プリンスホテル)が会場使用を拒否したことによるものである。今回、1951年から56回積み重ねられてきた歴史ある教研集会全体集会が中止せざるを得なくなったことは、憲法で保障された集会・結社の自由を侵害するものであり、極めて遺憾といわざるを得ない。

 日教組プリンスホテルと会場使用契約を締結したのは昨年5月であるが、同ホテルの一方的解除通告は11月である。日教組は解除無効を求める仮処分を東京地裁に申請、12月には同地裁が解除無効の仮処分を決定した。同ホテルは異議申立を行ったが却下され、1月16日には同地裁は日教組の使用を認める決定をした。同ホテルは東京高裁に抗告するも、同高裁は1月30日、日教組の会場使用を認め、ホテル側の抗告を棄却し、日教組側の主張が全面的に認められるに至った。
 同ホテルの一方的解除理由は、右翼団体の街宣活動により周辺に迷惑がかかり、営業に支障を来すというものであったが、東京高裁は「ホテル側が日教組や警察当局と十分打ち合わせることで混乱は防止できる」と判断している。

 プリンスホテルは、東京高裁から抗告を棄却され、日教組に会場を使用させるよう命じられたにもかかわらず、三度にわたる司法判断を公然と無視した。このホテルの行為は法治国家としてあるまじき行為として強く批判されなければならず、司法の意義も問われかねない重大な問題である。
 教研集会は、全体集会に3000人、延べ12000人が結集する大集会であり、開催2ヶ月前に代替会場を確保することはほとんど不可能である。
 教研集会は年1回全国の組合員が自らの教育活動の研究成果を発表する場であり、現場からの視点で学校教育の在り方を研究する独自の意義を有することや学校教育を支える存在として日教組の政策活動の柱となっている。同ホテルによる使用拒否はこうした正当な労働組合活動を妨害するものである。

 連合は、正当な労働組合の活動を妨害するいかなる行為も認めるものではない。憲法で保障されている集会・結社の自由と民主主義にもとづく労働運動を守るため、今後とも断固たる姿勢を堅持していく。