08.託された遺言 #5
「それ、いいな!」
マカフィとウィル、同時に声を上げた。
そうだ、どうして思いつかなかったんだろう? 竜だって、雨風にさらされるより、暖かい小屋の中で眠ったほうがいいに決まっている。歳を取ったエヴィーなら、なおさらだ。
「そうしよう。マカフィ、エヴィーの小屋のほうでいいよ」
声をはずませるウィルの背中を、マカフィはまたしてもバシッと叩いた。
「馬鹿。『小屋のほうでいい』って、お前な、そっちのほうがデカくなるじゃねえか」
三人で声を上げて笑った。
たしかに、パルヴィス竜は狭い場所を嫌うから、小屋は二人のテントよりよっぽど大きな物になるだろう。
ひとしきり笑って、エヴィーの小屋の計画を三人で話していると、いつもより早くネイシャンがやって来た。
「なーに、ずいぶん楽しそうね?……あら、マカフィ、いたの」
「いますよ。って、なんで先生がここに?」
お互いに、おもいがけない人物とはちあわせた格好だ。
ハルが、それぞれの事情を手早く説明した。
「ふーん、小屋ねえ。いいじゃない。エヴィーも喜ぶわよ」
ネイシャンは言った。それから、草花が散らかったまま土だらけのテーブルを見て、「それはいいけど、これじゃ勉強できないわよ!」と怒りだした。
ウィルとハルが、慌ててテーブルの上を片付けはじめると、マカフィは「じゃ、俺は帰るぜ」とさっさと立ち上がり戸口へ向かった。それから、「じゃあな、『お勉強』がんばれよ、竜使い」と言い置いて、テントを出て行った。
と、思ったら、すぐに戸口の布がひょいと持ち上がり、マカフィが顔だけ出して言った。
「おい、伝言を忘れてた。……トニー・ヒル氏の眠りが、終わったそうだ」
ウィルとハルは、片付けの手を止めた。マカフィとネイシャンも、沈黙した。
四人はしばらくそうやって、覚めない眠りを終えたトニー・ヒル老人のことを記憶に呼び戻し、彼に最後の挨拶を送った。
「……じゃあ、確かに伝えたからな」
顔を引っ込めかけたマカフィに、
「マカフィ、ありがとう。伝言だけじゃなくて、家のことも。嬉しかった」
ウィルが追いかけるように言った。
最後に、素直に御礼を言えた。マカフィは、気にするなと手を振り出て行った。
二人がテーブルの片付けに戻ると、ネイシャンが言った。
「私も、伝言があるのよ。ウィルに」
軽く咳払いし、首をかしげながら続けた。
「事情はわからないけど。ビリー・ヒルが、明日、家に来いって。朝一番に。必ず来るようにって。確かに、伝えたわよ」
マカフィとウィル、同時に声を上げた。
そうだ、どうして思いつかなかったんだろう? 竜だって、雨風にさらされるより、暖かい小屋の中で眠ったほうがいいに決まっている。歳を取ったエヴィーなら、なおさらだ。
「そうしよう。マカフィ、エヴィーの小屋のほうでいいよ」
声をはずませるウィルの背中を、マカフィはまたしてもバシッと叩いた。
「馬鹿。『小屋のほうでいい』って、お前な、そっちのほうがデカくなるじゃねえか」
三人で声を上げて笑った。
たしかに、パルヴィス竜は狭い場所を嫌うから、小屋は二人のテントよりよっぽど大きな物になるだろう。
ひとしきり笑って、エヴィーの小屋の計画を三人で話していると、いつもより早くネイシャンがやって来た。
「なーに、ずいぶん楽しそうね?……あら、マカフィ、いたの」
「いますよ。って、なんで先生がここに?」
お互いに、おもいがけない人物とはちあわせた格好だ。
ハルが、それぞれの事情を手早く説明した。
「ふーん、小屋ねえ。いいじゃない。エヴィーも喜ぶわよ」
ネイシャンは言った。それから、草花が散らかったまま土だらけのテーブルを見て、「それはいいけど、これじゃ勉強できないわよ!」と怒りだした。
ウィルとハルが、慌ててテーブルの上を片付けはじめると、マカフィは「じゃ、俺は帰るぜ」とさっさと立ち上がり戸口へ向かった。それから、「じゃあな、『お勉強』がんばれよ、竜使い」と言い置いて、テントを出て行った。
と、思ったら、すぐに戸口の布がひょいと持ち上がり、マカフィが顔だけ出して言った。
「おい、伝言を忘れてた。……トニー・ヒル氏の眠りが、終わったそうだ」
ウィルとハルは、片付けの手を止めた。マカフィとネイシャンも、沈黙した。
四人はしばらくそうやって、覚めない眠りを終えたトニー・ヒル老人のことを記憶に呼び戻し、彼に最後の挨拶を送った。
「……じゃあ、確かに伝えたからな」
顔を引っ込めかけたマカフィに、
「マカフィ、ありがとう。伝言だけじゃなくて、家のことも。嬉しかった」
ウィルが追いかけるように言った。
最後に、素直に御礼を言えた。マカフィは、気にするなと手を振り出て行った。
二人がテーブルの片付けに戻ると、ネイシャンが言った。
「私も、伝言があるのよ。ウィルに」
軽く咳払いし、首をかしげながら続けた。
「事情はわからないけど。ビリー・ヒルが、明日、家に来いって。朝一番に。必ず来るようにって。確かに、伝えたわよ」