25.新しき人々#8

 ガランは立てた指をテーブルに置き、コツコツと叩いた。頭の中を整理しているように見える。
「君は知ったそうだな。我々が食料をどうやって手に入れているか。ソディックからそう聞いている。では率直に語ろう。カピタルの人口はどんどん減っていった、それは一方で幸運なことだったのだ。少ない資源を、お互い争わずに分配することができた。首都の心が受け継がれやすかったのは、そのあたりもあるだろうね。だが、彼らは違う。あの人数、竜がほとんどいないことを併せて見ても、相当厳しい環境を生き抜いてきただろうと私は思う。彼らのやりかたは、とても合理的だ。悠長に話し合いをして物事を決めるより、ずっと早く次にやるべきことを決め、全員で動くことができる」
 ウィルはぶつぶつと口の中で繰り返した。合理的、ってなんだっけ。なんとなくこうかなとは思うが、正確にはわからない。帰ったらハルに聞いてみよう。久しぶりに辞書を思い出した。
「ハヴェオも同じだよ。彼は砂漠で鍛えられた、そしてどちらかと言えば、彼らに近い心を持っている。彼は焦っているのだ。私のやりかたでは手遅れになると。食料というより、そうだな……彼はむしろ、メルトダウンが近いことと、カピタルに次の世代が生まれないことを焦っているようだが。それは事実だから、仕方のないことだよ」
 ムカムカしてきた。ガランはなんでハヴェオのことを庇うんだろう。村中に噂を流されて、リーダーの座を追われようとしたのに。あんな男のために。 
「だからってリーダーに反逆するなんて。俺は子供のとき、父さんに教えられました。リーダーを信じて、何があってもその命令には従うようにって」
「ありがたいね。サムソンには感謝するよ。だが、それとこれとは別の話だ」
「どうして!」 
 ウィルは思わず立ち上がった。気に入らなかった。味方しようと信じていた相手が、自分の敵を庇っている。どうしてだ? 何のために?
 ガランは椅子の背もたれにゆっくり寄りかかり、座りなさい、と言った。ウィルが渋々座るのを待ってこう続けた。
「私とハヴェオの話を聞いていたのなら、遠からず私がハヴェオにリーダーの座を譲るつもりでいることは知っているね。私はそのつもりだよ。新しい時代は、『新しき人々』の手に任せるべきだ。より環境に適応した人々に。私はそう思っている。本当はもっと早くそうしたかったのだが……森に移住が完了するまでは、どうしてもできなかった。ちと事情があってな」
 ウィルは話の後ろをろくに聞いていなかった。
 彼はハヴェオをリーダーにするつもりだ。恐ろしかった。ハヴェオがリーダーになったら、カピタルはどうなってしまうんだろう。まさか、ルロウみたいになるのか? ソディックの最後の言葉が耳に焼き付いている。足手まといの人間を喰――