26.ポールの行方#1

 ルロウの竜使いと接触した夜、エヴィーを小屋に入れてすぐガランの家に向かった。ランプひとつが燈る薄暗い部屋に入ると、正面にガランが、向かいにハヴェオと意外な女性が座っていた。アリータだ。テーブルの中央に、小さな包みが置かれている。
「おや、ウィリアム。報告かね。何かわかったか」
 顔を上げ尋ねてきたガランに、ルロウの人々がニッガの木を切り倒していたことを報告すると、アリータが首をかしげた。
「家を建てる気かしら。着いたばかりなのに、気が早いこと」
「違うと思うね。そこまで追い詰められているか……放っておけんな。このままでは、彼らはどんどん森を伐り開くだろう」
 ガランは後ろ半分を独り言のように言い、報告ご苦労、とウィルをねぎらった。
 ウィルは落ち着かなかった。遠くから見ていたわけじゃない、こっちから近づき、ルロウの竜使いに向かい銃まで撃った。黙っているわけにはいかない。「まだ報告があります」と切りだし、自分がやったことをありのまま話した。
 話し終わると、自分に背を向けていたハヴェオがぐるっと顔を向け、睨みつけてきた。
「勝手なことを……君といい、ソディックといい、リーダーの指示をなぜ聞かない」
 あんたに言われたくない!と叫びたいのをこらえ、ハヴェオを無視しガランに頭を下げた。
「すみません。勝手なことをしました。でも、俺、間違ったことをしたとは思いません。あいつらがまた同じ事をしたら、俺も同じ事をします。許せないんだ」
「困ったな」
 ガランは苦笑していた。
「ウィリアム、私には彼らの事情が見えた。やむをえない事情があると見た。森を傷つけないで欲しいと申し入れるが、こちらも何か譲歩せねば彼らは聞かないだろう。その件は私に任せなさい。君はもう巡回しなくてよい、泊まり駆けして、次のシールド・ポールを埋める準備を始めなさい。ああそうそう、君の一番新しい地図を持ってきておくれ。彼らが一番欲しがっているものだ」
「地図は……地図は、いやです。俺にだって必要です」
 ウィルは首をぶんぶん振った。ハヴェオが眉をおもいっきりしかめ口を開きかけたところへ、ガランがぴしりと言った。
「写し取ったら、君に返す。持ってきなさい。今すぐだ」
 口答えできる隙は無かった。
 渋々、自分のテントに置いてきた地図を取って返ってきたとき、三人はもう別の話をしていた。テーブルの中央にあった包みが開けられている。銃の弾が十個、さらに何に使うかわからない透明の玉が一つ置いてあった。握りこぶしくらいの球体の真ん中に、親指の爪くらいの銀色の球体が浮かんでいる。