03.成人の報告 #4

 サムは、森が発見されてからしばらくの探索の後に、怪我が原因で何かに感染し、まもなく亡くなっていた。一年前のことだ。
「我々は、この森に入植しなければならん。一年かけて、少しづつ環境にも慣れてきた。生活も便利になった。屋根のある家に住み、土を耕すことを試み、食料の種類も増えている。プランクトンだけを食べて放浪してきた年月を思えば、このような穏やかな生活は、まさしく天国と言って良かろう。しかし、ここで安穏(あんのん)としてはおれない」
 ガランは眉をあげた。答えを促す先生の顔だ。
メルトダウンですね」
 ウィルはかすれた声で応えた。
「そうだ。もう、あまり時間がない」
 ハルが、顔をひきつらせてこぶしを握った。メルトダウンという言葉は、どんな人間でも凍りつかせる響きがあった。二人が知っている限り、その言葉を正しく伝えようと恐怖せずに口に出せるのは、ママ・ペドロスぐらいだった。
「ハル、脅えなくてもよい。たしかに我々は深刻な状況にある。けれども、それに脅えて生きる弱虫はカピタルにおらんはずだ、そうだな? それに、今はウィリアムがいる」
 ウィルは身を縮めた。失望されるよりましだと思っていたが、あらためて口にされると、自分にかけられる期待は圧倒的だった。
「ウィリアム、まあ楽にしなさい」
 ウィルの様子を見て、ガランが穏やかに言った。
「君の任務を話そう。もちろん、君が嫌だと言ったら強制はできないが……」