03.成人の報告 #5

「俺、やります」
 ウィルは即座に答えた。
 ガランはにっこり笑った。
「君は本当にサムソンに似ている・・・。では、続けるぞ。君の任務は、まず森を探索することだ。どのような地形か、どんな植物があるか、どんな生物がいるか、確認することだ」
「探索、ですか」
 ウィルは意外に思った。ガランの言うことは、メルトダウンまで時間がないと言ったこととは裏腹に、ひどく悠長に思えた。
「そう、まずは森をよく知ることから始める」
 ガランは続けた。
「この森は我々の故郷になる。我々が死んだ後も、子供達や孫達が生きていく。だがそれは、この森が我らを受け入れてくれたらの話での。我らはずっと、他の生物がいない環境で生きてきた。他の生物と関わりあいながら生きていく力は、もはや失われてしまった。しかし生物は本来、さまざまに干渉しあって生きているものだ。我々がこの森の輪の中に入れるか、拒まれるか、慎重に試さねばならん」
 ウィルの当惑した顔を見て、ガランは口調を変えた。
「突然こんな話をして、驚くのも無理はない。第一、なにをしたらよいかわからんだろう。まあ、詳しい話はまたおいおいするとしよう。ともかく、森をよく調べて、我らが移住できるかどうか見極めてほしいとだけ言っておく」
「わかりました」
 ウィルはうなずいた。
「この森に着いてから、サムソンがしばらく探索する期間があった。我々が切り開いた外周よりもう少し奥まで、彼は調査していたはずだ。おそらく村の周辺に、痕跡が残っているだろう。初めはあまり村から離れずに、近くを回ったほうがいい」
「ひとつ、うかがってもいいですか」
 ウィルは不意に口を挟んだ。サムが死んでから、ずっと疑問に思っていることがあった。