敵は違和感にあり。

わたりとりの書庫へようこそ。

栞でほっとひと息 第四十四弾です。

なんと! 昨日の「40.選ばれし民#8」がカピタル本文500記事目とあいなりました。
記念に、今回は、製作の舞台裏を書きます。というより、言い訳を。



ここ1ヶ月くらい、時間を見つけては原稿を読み返しているのですが、いやーもーそのー、目を覆いたくなる間違いがそこかしこにあって、落ち込んでいます。

推敲しきれず見落とした誤字脱字、てにをは間違い、はまだいいとして(いや、よくはない)、初期のころの文章に読点が多すぎることと表記ゆれとが、我ながら許せません。全部直しちゃる。記事のほうはもういいけど(←サジを投げた)、ダウンロード版は完璧にしちゃる(←自己暗示)。

まあそれらは直せばいいとして(涙)、某所で敬語の話を読んで、また新たな不安が芽生えました。
誤記はいいのです。自分で気付くから。だが敬語表現は、私としては妥当と思って使用しているので、推敲では直せないのです。私の日本語能力がいかんなく披露、というか暴露されたままです。

たとえば昨日の記事では、これ↓
「……お呼びしますか、そのかたを」
ファリウスがガランに対し、マリー・ペドロスを(誰かに指示して)呼んだほうがいいか、と問う文章。
三人の心理的上下関係は、ガランよりファリウスが下、ガランよりマリーが下、ファリウスとマリーが対等(ややマリーが下)、だがファリウスとしては、ガランが特別視するマリーに対しても若干の敬意を表したい(そうすることによって間接的にガランへの敬意を表す)、といったカンジです。けっこう複雑な関係。こういうときの敬語って、迷うよ~。

ここで「呼ぶ」の前に付いている「お」は、軽度の謙譲の意味です。
私にとっては、これが一番自然な会話文です。しかしひょっとして、自分が「呼ぶ」動作に「お」を付ける日本語はヘンなのか?と。動詞の前に付ける「お」「ご」は文脈によって「尊敬語」にも「謙譲語」にもなるのですが、動詞によってはどちらか一方のみが適切な使用法になりそうなので。「呼ぶ」はどうなんだろう。たぶん大丈夫だと思うのだが。なんとなくだが、謙譲の用法はもともとは誤用だったんじゃないか?という気もするし。むむ~。
参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%AC%E8%AA%9E

もういっちょ。
「彼女には、明日にでも記録を再生してお見せしましょう」
これにも同じ疑惑。「見せる」に謙譲の意味で「お」を付けるのは可?不可??^^;
ちなみに、「見ていただきましょう」「ご覧にいれましょう」なら敬語としては問題無しですが、謙譲の度合いが強すぎ、ファリウスの発話としては違和感があったのでやめました。はい。

読者様が「?」「↓」となるような稚拙な表現はできるだけ修正したい。稚拙な表現は、読者様を物語の世界から現実に引き戻してしまうからです。だが、敬語表現は、どうなんだろう。無難であることを優先するなら、できるだけ正しい(=カタい)表現を使うべきなんですが……

「正しい敬語」「美しい敬語」というのはもちろんあって、特にビジネスではそういう「正統な敬語」が用いられるべきだと私は思います。
だが、「微妙な人間関係・心理状態からくるストレスを緩衝する敬語」というのもあって、そこが難しい。使用者の年代や価値観(おそらく、読書量などでも)で、「よし」とする範囲がかなり違う。いわゆる「敬語の乱れ」はそのあたりから来るのでしょう。私の「よし」の範囲が世間様の「よし」とズレてたら、どうしよう。不安だ。自分の日本語能力が不安だ。

明治の文豪の小説には、当時としては斬新すぎる(=眉をひそめられる)日本語が使われていたりするそうです(うろ覚えだが、どこかで読んだ)。が、それは風俗小説だから許されるという面があって、時空を超えたファンタジー小説の場合はどうなんだろう。ファンタジーの会話文に「なんかふつーにいくないくな~い?」みたいな若者言葉が出てきたら私はドン引きます。しかし美しい日本語ばかりでは臨場感がない。ああどないしょ。

正しいか正しくないかは、どうでもいいのです。読んでて違和感があるかどうかです。
とりあえず上記二文について、「そこは違和感がある、変えたほうがいい」というコメントが多ければ、ダウンロード版で修正します(多数決です。民主主義です)。



実は某所で、こういう間違い文を書いてそのままにしてあるのですが↓
表現したいものを自分の内でじっくりとあたため、言葉を選び形を整え、なんども推敲し、これぞというものを完成する。
正しい日本語に直すなら、
(1)これぞというものが完成する
(2)これぞというものを完成させる
・・・のどちらかですが、修正するなら私は(1)を選びます。(2)はなんか違和感がある。

(1)と(2)の違いがわかるかたと創作談義したら、盛り上がるだろうなぁ(笑)