43.メルトダウン#4

 ファリウスの声。
「壁に並んでいる装置を破壊しろ、徹底的に!」
 シンと部屋に駆け入る。視線を下に戻す。壁――休憩所の地下にあった装置と同じだ。丸くカーブする壁全面に黒いスクリーン、その下に延々と連なるパネル、誰かを待って整然と並んでいる椅子、椅子、たくさんの椅子。パネルは薄緑色に輝き、ところどころに強い光が点っている。直感した。作動してる!
 銃を構え、パネルの一端に撃ち込んだ。衝撃音、パネルの表皮が剥がれ飛び、人の血管じみた何かの赤い束がちぎれ溢れ出る。その隣にもう一発、さらに、さらに。背後でシンの銃声が鳴り響く。すさまじいを騒音を突き抜け「急げ!」とファリウスの声が飛ぶ。
 弾薬ポーチから弾を掴み出し、壁に沿って歩きながら装填し撃ち装填し撃ち放つ。銃声、破壊音、硝煙、砕け落ちる破片、噴き上がる火花、無茶苦茶に混じりあい――ふいに、パネルも、床も、壁も、なにかもから、ふっと全ての光が消えた。
 真っ暗闇。硝煙の酸っぱいような匂いだけが鼻を突く。
 向こうから声が聞こえてきた。
「……やったか? メイヤ、聞こえるか。停止させたぞ」
 ファリウスらしき声。なんと言っているか、ウィルにはわからない。ソディックに機能停止を確認しているのか。……やったのか?
 ほっと銃を肩から降ろし、ポケットのライトを取り出そうとしたそのとき、床がポッと光った。
 暗闇に壁が白さが浮かび上がる。手付かずだった残り半周のパネルに緑の光が灯る。黒一色だったスクリーンが青みがかる。パネル上に無数に並ぶ網目状の四角枠、そのひとつひとつに記号が記された小枠が、次々と点滅を繰り返し始めた。点滅にあわせ踊るかのように、スクリーンに記号が溢れ流れ始めた。生き返った? 機械が? どうして!?
 理由はどうでもいい、ともかく破壊続行だと銃を構えたところへ、シンの声が割って入った。
「待て、撃つな! 弾の数は?」
 はっと腰のポーチを見る。もういくらも残っていない。
 シンを振り返ると、彼は中央の柱に歩み寄りウィルを手招きしていた。柱といっても、部屋ひとつ中にくり抜けそうな太さだ。駆け寄った壁面には、これまた緑の枠線で扉が描かれている。
「この建物は、八割が機能停止しても残り二割で自律復旧するらしい。動力も複数あるそうだ。上に行くぞ」
「上?」
「シールド発生装置の先端がある。そいつを叩き潰す――ソディック!」
「入力中!」
 叫び声が返って来た。ファリウスの隣にソディックがいるらしい。猛烈な勢いでなにかを弾き叩く音、続いて「完了!」