05.銃 #5

 ラタの家は木組みの家だ。
 学校、ガランの家に続き、カピタルで三番目に「建てられた」のが、なぜかラタの家だった。もっとも、家といっても、扉を入ってすぐ大き目の部屋がひとつ、それだけの物だったが。
 中は、女所帯らしく手作りの小物が溢れ、綺麗に編んだクロスがテーブルや壁を飾っていた。両親をなくした二人姉妹が、自分達で手を加えたのだろう。部屋の隅に並ぶベッドにも、手縫いの刺しゅうを入れた毛布がかかっている。ウィルとハルが住む、寝起きだけに使うテントとはさすがに違う。
 手先の器用なハルが、学校に迷い込んできた小鳥に草で編んだ巣を作ってやったことがある。小鳥の羽やみんなが持ち寄った色々な毛糸玉が詰まった小さな巣は、カラフルでふわふわと可愛らしかった。彼女達の家は、それに似ているとウィルは思った。
 女の子の家に入るのは、なんだか照れくさい。それがたとえ、あのラタの家だったとしても――とウィルは遠慮がちに見渡して、右手に、二つ目の扉があることに気がついた。
 アリータはその扉を細く押し開け、奥へすべり抜けていった。
 近寄ってみると、三重に張り合わせた木板のあいだにカチカチの土をたっぷり塗りはさんである、頑丈な土扉だ。アリータが通った隙間ではたりないウィルが、さらに押すと、ずっしり重い。扉の内側には、ウィルの腹回りほどもある丸太が閂(かんぬき)になるように渡してある。
 不審がるウィルを残して、アリータは細く暗い通路をどんどん先へと進んだ。
 通路は下向きに傾斜している。下からわずかにさす光が通路の壁を照らしている。
 家を外側から見たとき、ラタの家はこんもりと盛り上がった土山の横に木組みの家が埋まるようにして建っていたのだが、位置からしてこの通路は、その土山の中へと続いているわけだ。
 不意に通路が明るく照らされた。行き止まりの扉が大きく開けられたのだ。
 ウィルは眼をしばたたいた。それから明るい光が充満する部屋に首をつっこんで、目を疑った。