05.銃 #6

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 部屋は火力を最大にしたいくつものランプで惜しみなく照らされていた。
 中央に紅く燃える石がぎっしりと詰まった鉄の箱があり、床や机の上にはおよそ細身のアリータが操るとは思えない鉄製の器具が散乱している。燃える石の熱気でうだるようだ。だが、どこかに通気口があるのだろう、絶えず左の方から新鮮な空気が頬を打った。
「ウィリアム、見てごらん」
 アリータが壁ぎわに近寄って振り返った。
 壁には、細長い鉄棒が何本も立てかけられていた。
 いや、鉄棒とはいえない。近寄って一本降ろしてみると、細い棒の中央に穴があいていた。棒というより、筒というべきだろう。そして長い筒の下のほうが二股にわかれ、二股部分は木と竜の皮でくるまれている。筒の中ほどには、奇妙な小さいでっぱりがあった。
「これと組み合わせて使うのよ」
 アリータは鉄筒をしげしげと検分するウィルに言って、ポケットから中指くらいの短さのこれまた金属筒を取り出した。銀色に光っている。受け取ると、小さい割にはずしりと重い。
「完成するまで、大変だったんだから。何度も指を吹き飛ばしそうになったしね」
 アリータはこともなげに言ったが、ウィルは思わず銀筒を落としそうになった。
 手放したいが放りだすわけにもいかず、思わずオロオロと足踏みしたウィルを見て、アリータは笑ってウィルの手から銀筒を取りあげ、ひょいひょいと投げて弄んだ。
「なんだ、臆病ね」
「指が吹っ飛ぶ?」
 ウィルはたまらずに聞いた。
 アリータが、反対の壁ぎわに置かれた小さな樽を指し示した。
「あれ、何かわかる?」
 考えて、『わからない』と言おうとした瞬間に、アリータは腰に手を当てて言った。
「火薬よ」
「火薬? あの、一瞬で燃えるっていう!」
「燃えるっていうか、爆発する、あの火薬ね」