Home away Home #9

青年会主催「夏休み子ども会」。昨年のプログラムとほとんど同じだ。
朝9時すぎ、子ども達が親に連れられてやって来た。10時、子ども達とお世話の大人全員で神前の間に整列。教会の布教師(敬称は「先生」)の発声に倣って礼拝。先生から10分ほど交霊施術を受ける。

 

プログラム開始。
午前中はオリエンテーション。たたみの部屋で車座になる。世話役の代表(30歳くらいの青年)から会の目的・二日間のスケジュールなど説明した後、子ども達の自己紹介。みんな世話役が手作りした名札を胸に付けている。ふざけてじっとしていない子、体をくねらせて照れまくる子、ムッと不機嫌そうな子、じっと不安そうにしている子。いろいろ。

 

世話役の紹介もひととおり終わったところで昼食。信者さんのどなたかが二人、賄(まかな)いの手伝いに来てくださっている。食事どきになると男の子が元気になる。礼拝に来た信者さん達が笑っている。

 

午後。世話役の青年の車に子どもたちを分乗させ、近くの市民公園へ。清掃奉仕(ゴミ拾い)。みんなけっこう楽しそう。それはいいんだけど子どもの数が合わない。どこ行った? 公園から出てないだろうな。このへんは交通量多いんだよ、頼むから目の届く所にいてくれ。あーいたいた!やれやれ。5つ6つゴミ袋いっぱいにして終了。
教会に帰る。麦茶とおやつ。いただきます。おっ食べるの早いねー、ってゲームすんな! ゲームはやめなさい。今はやめなさい。

 

暑い? 扇風機、回ってるでしょう。クーラー? ないよ。あるのは先生の部屋だけ。扇風・・・暑くないのかって?暑いよ。暑い暑い言うともっと暑くなるよ。はいはい、机を片付けて。座って座って。あっち向いて座って。先生のお話があるから静かに聴いてください。霊界がどうなっているかというお話。・・・おぉ、みんな神妙だな。こういう話はおもしろいのかな。

 

先生の話が終わったらしばらく休憩。いつのまにか子ども達同士うちとけている。またゲーム・・・まぁいいか。見物してる子達と部屋のすみで固まっている。そんなくっついて暑くないのか、君ら。・・・おとなしかったあの女の子、友達ができたみたいだな。よしよし。わー走り回るな!そこ(神前)はアカン!そこは走っていいところじゃない。わかるよね。

 

6時に夕拝。続いて夕食。カレーだ。おかわりあるよ。どんどん食べて。女の子もいけいけ。って君は何杯目やねん。腹こわすで。あ、賄いの奉仕のかた。はい美味しいです、ありがとうございます。
後片付けの後、一同、近くの風呂屋へ。あ、行く前に信徒印、外してよ。コレに乗せて。あっちで外したら忘れるかもしれんやろ。置く場所もないし。はい行くよー。30分であがってー。ジュースは買うなよー。はいはい帰るよー。ただいま。はー。おっと。みんな、信徒印、取りにおいでー。どれが自分のって?・・・紐の長さと汚れ具合で、わかるやろ。わからん?・・・みんなが取りに来て残ったのが、君のだな。
さて・・・え、花火?花火やるんですか?そんな予定ありましたっけ。すぐ終わるって・・・まぁいいか。はいはーい駐車場に出て。花火だって、花火やるんだって。私は中で待ってるよ。ちょっと疲れました。

 

おかえりなさい。花火、終わりましたか。じゃあ机、出しますか。おーい・・・ゲームはやめなさいってば。宿題やる時間です。夏休みの宿題。ちゃんと持って来た?そうそう、それ机に出して。わからないところがあったら呼んで。なんでも訊いてください。いやちょっと待ってて。先生、お呼びですか・・・数学・・・替わりますから、向こうの子、お願いします。
こら君、なんで立ってるの。宿題は?え、もう終わったの?ほんとに?しゃあないなー。時間が来るまで、他の子の勉強、見てあげなよ。そうそう、君が先生になる。いやー頼もしいね。

 

はい、時間が来た。では宿題と机を片付けて。はい、パジャマに着替えてー。トイレも行ってきな。いいから行っておいで。・・・行ってきた?みんな揃った?
じゃあ神前に並んで。二人一組で向かい合って。15分ずつ施術の交換をします。あ、そうか、君はまだできないのか。じゃあ私と組もうか。受けるだけでいいから。・・・・・・シーン・・・・・・みんなちゃんとできてるな。家でも毎日交換してるのかな。・・・あの子、昨年も来ていた。落ち着きが無くて手を焼かせるって親御さんが相談に来てた子だな。今年はずいぶん落ち着いている。変わったなー。

 

はい、そろそろ終わってください。お互いにちゃんと礼をして。そう。ありがとうございました。
もう寝る時間だよ。移動してください、こっちの部屋ね。布団はそこの扉を開けて。いっぱいあるねー、はい持って行って。あっちに敷くんだよ。ほい、枕。ほいほいほい。数、全部ある?電気消すよ。ちゃんと寝るんだよ。寝ないと怒りにくるぞー。おやすみ。

 

あー。お疲れさま。他の人達は?台所でカレーの残りを?どうしようかな。まだ寝てない子がいるし。誰か残っていないと。じゃあ、もうしばらくここに居ますか。
最近、体のぐあいは?ああ、それは良かった。私の父?うん、おかげさまで。悪くはないけど、暑すぎるとやっぱりつらいみたい。毎年のことなので。そのうち涼しくなれば、元気になるだろうし。
・・・へぇ、そんな遠くまで施術に?毎週?いや、その信者さんは知らない。父は知っているかもしれない。すごいな。えらいなぁ。えらくないよって、えらいでしょう。自分の体調だってあるし、やりたいことだってあるだろうし。私には、できない。一度や二度なら行けるけど、約束して続ける自信はないな・・・そんな自分勝手な奉仕は、かえって相手に迷惑だと思うし。

 

明日のプログラムに、季刊誌の配布があるよね。本当は、私は苦手なんだ。郵便受けに入れるくらいはいいけど。手渡しは・・・できない。
私ができないことを、子どもらにやらせていいのかって思う。それに、子どもはまだ、わからないよね。自分のやることがどういうものか、わかってない。わけのわかっていない子どもに、こういうことをしなさい、こういう言い方をしなさいと教えて、家を回らせて、なんの意味があるのかと思ってしまうんだ。それ、奉仕なのかな。私は違うと思う。こういう考え方はオカシイのかな。

 

うん。聞いてくれて、ありがとう。



ウチの信教に在籍していた頃、青年(十代後半~三十代)の世話役として「子ども会」に数回参加したときの実話です。異なる回の内容が交じり合ってはいますが、創作は入っていません。

ウチの思考法・ウチの言葉の使い方に立ち帰って、文章を書いています。数箇所「ウチの信教特有の言葉」を別の言葉に置き換えています。宗派を特定されたくないので。しかし、ソトの人に通じるように、あるいは好意的に受けとめてもらえるように、文章そのものを意訳するような変換は行っていません。
とはいえ私は不良信者だったので、ウチの生粋の信仰者から見ればかなーり不心得な文章でしょう。たぶん。

蛇足ながら。文中で子ども達のことを「君」「あの子」と呼んでいますが、実際には必ず「○○くん」「○○ちゃん」と名前で呼んでいました。もちろんでござるー。